中東情勢は不安でも、半導体関連の決算発表は来る

週明けに半導体関連の決算発表あり

中東情勢が緊迫しており、特に週末はリスクオフという印象でした。日本市場では東京エレクトロンやSCREENはプラスで引けたものの、米国SOX指数は-2.7%と大きめに下げました。そんな状況ですが週明けは半導体関連の決算発表がいくつかありますので、見所を考えておきたいと思います。

決算発表予定
10/18(水) 14:00 ASML
10/19(木) 5:00 ラムリサーチ (LRCX)
10/19(木) 14:30頃 TSMC
10/19(木) 16:00 ディスコ

 

中国の成熟プロセス投資が伸びる?

この中では特にラムリサーチ(以下、ティッカー:LRCXで表記)の売上実績とガイダンスに注目したいと考えています。これまでの決算資料から地域別売上をグラフにしたものが下図ですが、23Q1からQ2で売上全体は下げたものの中国向けは横ばいとなっています。この中国向けが伸びている、または伸びる見込みとのガイダンスがあるか確認したいです。米国の規制が掛かる前の駆け込みなのか、それともSEMI(国際半導体製造装置材料協会)の予測通りにここから中国向けが増えるのでしょうか?SEMIの7月時点での予測は下記となっており、2024年の半導体製造装置売上は中国が首位になるであろう、とのことです。あと2ヶ月半で2024年なので、そろそろ中国向けが伸びてくるのかもしれません。

SEMIの地域別売上予想
・2023年:台湾が首位
・2024年:中国が首位

 

中国が成熟世代で7nmプロセス製品を量産

中国がEUVを使わずに7nmプロセス製品をスマホに搭載というニュースがありました。7nmは、EUVを使わずにDUVでも複数回に分けてパターンを作るマルチパターニングによって作製可能です。EUVよりコストが高いという問題がありますが、セルフアライン・ダブルパターニングとか、その2倍のクアドロプルパターニングなどよって一桁nmのパターンが作製できます。

ただしこれらは工程数が多くなり、例えばダブルパターニングではシングルの4倍ほどになります。エッチング(削る)、デポジション(堆積による膜などの形成)といった工程も増えてきます。

そうなると、中国向けにドライエッチング装置やCVD(Chemical Vapor Deposition=デポジション)装置の売上が伸びたりするのかな?と考えました。

ドライエッチング装置といえばLRCXで、シェアを半分くらい握っていると思います。残り半分については東京エレクトロンとアプライドマテリアルズ(以下 AMAT)が取り合っているような感じかと。

CVD装置はLRCXとAMATがシェアをほぼ2分しているイメージです。東京エレクトロンも1割程度あると思います。

 

東京エレクトロン

日本の半導体製造装置メーカー、東京エレクトロンも中国向け比率が比較的高めです。2023年3月期Q3から中国向けが増加傾向となっています。ここは前回決算発表時(2023.8.10)に、中国にて成熟世代への投資が旺盛とのコメントありました。

東京エレクトロン 2024年Q1決算発表資料より
CY2023の事業環境:「成熟世代における中国顧客の投資は加速 」

同決算発表時の質疑応答集より
「各国政府による一部装置の輸出規制を見越し、中国顧客は安定的な成長戦略に基づき成熟世代への投資に切り替えている。中国においては、新規の顧客も増加しており、成熟世代向け投資は旺盛。一過性のことではなく、継続した投資を期待している。」

SEMIの見解と一致しそうですが、11/10(金)の決算発表で内容確認したいと思います。

 

メモリ市況回復にも期待

SEMIは半導体製造装置売上が2024年には回復、とくにDRAM、NAND向けが急回復すると予測しています。

半導体製造装置売上(前工程全体)
2023年→2024年で+14.8%

分野別内訳
・ファウンドリ・ロジック分野

 2023年→2024年で+3%

・DRAM分野
 2023年→2024年で+31%

・NAND分野
 2023年→2024年で+59%

LRCXのメモリ向け売上比率は、メモリ不況の現在(2023年Q2)でも27%、2022年以前は50〜60%の四半期もありました。

東京エレクトロンもメモリ向け比率が高く、直近四半期でも売上の30%がメモリ向けです。2022年は50%以上となる四半期もありました。SEMIの予想通りにメモリ向けが急回復するなら、昨年に東京エレクトロンがコメントしたように「2024年はビッグイヤー」になるのでしょうか。

メモリ不況からの回復と時を同じくして中国が成熟世代の半導体製造装置を買う、となると半導体製造装置の売上はこれから伸びていくのかもしれません。SOX指数は下図のように、前工程製造装置の投資額が減る年に急上昇して、投資額が前年比ピークを過ぎた年から急落する傾向があります。こうして見ると2024年もまだSOX指数は上昇が期待できそうに思いますが、どうなるでしょう。

SOX指数の日足ですが、長い上ヒゲのあとに長い陰線と目先は嫌な感じかなと。長期的にはSOX指数は強気に見ていますが、この中東情勢では株安になっても仕方ないと思いますので攻め過ぎないポジションで冷静に売買していきたいと思います。

例年SOX指数は10月後半に伸びる傾向があるので、米国半導体ETFのSMH、SOX指数の3倍ETFのSOXLなどの買い場になるのか?注目しています。ynark.hatenablog.com

今回は以上です。読んでいただき、ありがとうございました。

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